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医療ビッグデータ ー オミックス、リアルワールドデータ、AI医療・創薬 ー 刊行!

医療ビッグデータ ー オミックス、リアルワールドデータ、AI医療・創薬

著者が近年折に触れて行ったビッグデータ医療、AI医療・創薬についての講演や総説をまとめた成書。最近注目を集めているこの分野に関して、見逃されがちな基本的なコンセプトを丁寧に解説し、とくに欧米におけるこの分野(ビッグデータ医療・創薬)の誕生の背景・発展の経緯を詳しく解説し、今後の発展の方向を予測している。

 著者は、「ビッグデータ医療」をこれまでの医療とは異なる「データ駆動型医療」の鶏鳴ととらえ、これが従来の仮説駆動型医学・医療を根底から改革し、今後数十年にわたって、医学・医療に大規模な「パラダイム変換」をもたらす革命的変革を起こすと唱える。

 第1章は、このようなパラダイム変革について論じ、個別化医療、先制医療、生涯にわたる医療など精密医療と参加型医療が交わる未来型医療について述べている。第2章は、次世代シーケンサの急激な発展によってもたらされた米国のゲノム医療の怒涛の臨床実装を、その誕生から発展にいたる歴史的事実をたどり、現在の精密医療の動向について詳説する。第3章はアイスランドの国家的プロジェクトに端を発し英国で確立したゲノム・コホート型バイオバンクや疾患バイオバンクについて、その概念形成の歴史を振り返るとともに、欧州でのバイオバンクの活動を総覧する。ここまでの記述で、最近のウェアラブルセンサーとスマートメディアの統合によるモバイルヘルス、また電子カルテデータの大規模蓄積によるリアルワールドデータのビッグデータについても述べられている。

 第4章は、人工知能の歴史を述べるとともに、ビッグデータ解析の有望な方法であるディープラーニング(DL)について、その代表的な形態、すなわち自己符号化DL、コンボリューション型DL、再帰型DLなどの解説を含め、方法論をやさしく解説している。第5章は、人工知能の医療・創薬分野での応用について、現状の総説が述べられ、今後の医療においてAIとヒトが新たな分業体制を築き、疾患のシステム的展開力と環境―遺伝子相互作用を包摂的に把握する医学・医療が共創的に展開される未来像について述べている。

 本書の記述を通して、ビッグデータ医療、AI医療・創薬に関する全分野を鳥瞰的に理解し、これからの医学・医療の方向を理解することができよう。

もっとよくわかる!医療ビッグデータ ー オミックス、リアルワールドデータ、AI医療・創薬 ー

著者  田中 博 日本オミックス医学会理事長

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